▼ 是正勧告・労働環境
2009年12月07日
「仕事」と「家庭」の優先度合いはどちらが高い?
◆厚労省が調査結果を発表
近年、「ワーク・ライフ・バランス」の重要性が叫ばれていますが、「人口減少社会」が到来する中、労働者が仕事と家庭を両立して安心して働き続けることができる環境を整備することは、国にとっても企業にとってもますます重要な課題となっています。
先日、厚生労働省が民間企業に委託して実施した調査の結果により、仕事と家庭の両立支援(ワーク・ライフ・バランス)をめぐる現状等が明らかになりました。
◆現実は「仕事優先」が多数
この調査は「子育て期の男女への仕事と子育ての両立に関するアンケート調査」というもので、未就学の子を持つ男女(男性正社員、女性正社員、女性非正社員、専業主婦)を対象に実施され、4,110件の有効回答がありました。
仕事と家事・子育ての優先度の希望と現実をみると、正社員男性の58.4%、正社員女性の52.3%が「仕事と家事・子育てを両立」させたいと考えていますが、現実としては、男女ともに「仕事優先」(男性74.0%、女性31.2%)の割合が高くなっています。
◆帰宅時間の状況、女性の退職理由
また、帰宅時間をみると、関東圏の男性で夜9時以降に帰宅する割合が30.4%となるなど、男性の帰宅が遅い状況が明らかになりました。
妊娠・出産前後に女性正社員が仕事を辞めた理由としては、「家事、育児に専念するため自発的に辞めた」の割合(39.0%)が最も高く、一方で、「仕事を続けたかったが仕事と育児の両立の難しさで辞めた」(26.1%)と「解雇された、退職勧奨された」(9.0%)の合計が35.1%となっています。
◆制度の利用しやすさ、勤務形態、短時間勤務
職場の両立支援制度の利用しやすさでは、育児休業制度や子の看護休暇等について、女性のほうが男性より「利用しやすい」と答えた割合が高く、男性の方が「利用しにくい」と答えた割合が高くなっています。
夫の就労時間別に妻が希望する勤務形態をみると、夫の就労時間が長いほど妻の「短時間勤務・短日勤務」を希望する割合が高くなっています(夫の就労時間が「35時間以上40時間未満」の場合25.1%、「70時間以上」の場合43.7%)。
そして、短時間勤務で働いた場合の評価については、「どのように評価されるか知らない」との回答割合が、男性38.6%、女性31.8%と高くなっています。
2009年11月24日
割増賃金の不払いに関する是正指導について
昨年度のサービス残業等、割増賃金不払いなどについて、厚生労働省より是正結果が発表されました。(平成21年10月22日付)
◆ 割増賃金って・・・?
企業は、基本的には週40時間・1日8時間という法定労働時間を超える労働を従業員に課してはいけないことになっており、どうしてもそれ以上働かせたければ、変形労働時間制を利用したり、労使協定(いわゆる36協定)を締結する必要があります。また、どんなに制度を整えても、法定時間外の労働はやはり≪割増賃金≫を支払わなければならないのです。
◆ 平成20年度の是正結果
今回、厚生労働省において発表したのは、昨年度1年間で、割増賃金の支払いについて労働基準違反として是正をした事案のうち、一企業当たり100万円以上の割増賃金が支払われた事案で、以下の通りとりまとめられました。
・是正企業数:1,553企業 (前年度比 175企業減)
・是正金額:196億1,351万円 (前年度比 約76億円減)
・対象労働者数:180,730人 (前年度比1,187人増)
これらは、労働者やその家族の方などから、各労働局、労働基準監督署に対して長時間労働、賃金不払残業に関する相談が多数寄せられており、これらに対して重点的に監督指導を実施し、取りまとめられたものです。
割増賃金の支払いを怠り、是正勧告で不正が認められると、不払い分の支払い義務が発生するばかりでなく、労基法違反としての罰金が課されます。中小企業にとっては経営が傾く要因ともなりかねません。
◆ サービス残業解消のために
賃金不払い残業(いわゆるサービス残業)の解消については、平成13年4月に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」が出ています。
また、具体的に労使で取り組んでいくことが必要ということで、平成15年5月に「賃金不払残業総合対策要綱」及び「賃金不払残業の解消を図るために講ずるべき措置等に関する指針」が出ています。
今後も、重点的な監督指導が実施されることとなっており、特に今月11月は「労働時間適正化キャンペーン」月となっているようです。
◆ まずは就業規則
前述のとおり、残業がある会社にとって最低限必要なのが「就業規則」・「36協定」です。当社でも作成のご相談を承っています。検討されるのであれば、お気軽にお問い合わせください。 http://www.d-produce.com/regulation/
2009年09月24日
新型インフルエンザに対する企業の取り組み
新型インフルエンザの猛威はとどまることを知らず、世界保健機関(WHO)の発表によれば、9月6日時点における新型インフルエンザの影響とされる死亡者数は世界で3,200名を突破したそうです。
日本でも8月中旬に新型インフルエンザの影響による初の死亡者が確認されました。薬局の店頭からマスクがなくなってしまうなどの現象も再び起きつつあるようです。
東京経営者協会では、8月下旬に「新型インフルエンザ対策の取組み状況に関するアンケート調査結果」(東京都内の会員企業が対象。1,210社のうち237社が回答)を発表しました。
企業が事前にとった対策としては、「備蓄品の調達」(72.3%)、「社員の意識啓発」(64.5%)、「対応体制・意思決定プロセスの構築」(50.0%)、「対応マニュアル・行動計画の策定」(47.7%)が上位を占めました(複数回答)。
また、三井住友海上火災保険が行ったアンケート調査(上場企業が対象。3,807社のうち722社が回答)によれば、社内で新型インフルエンザ感染が拡大したときに対応するための「事業継続計画」を策定している上場企業は38.1%であり、新型インフルエンザ対策について「実行中」「対応を策定中」「策定予定」のいずれかと回答した企業はあわせて90.6%でした。
その他、企業としては、感染した社員や感染の疑いのある社員にどのタイミングで「自宅待機命令」を出すのか、社員の家族の感染が発覚した場合はどうするのか、社員を自宅待機させた場合の「賃金」や「休業手当」はどうするのかについても考えておかなければなりません。
企業のリスクマネジメントとして、規程の策定なども含め、いざという時に備えて対策を考えておくべきでしょう。
2009年09月18日
若年層に対する重点雇用対策の最終案
政府が7月に立ち上げた「若年雇用対策プロジェクトチーム」による重点雇用対策の最終案が明らかになりました。
この対策には、企業の採用抑制により学校を卒業しても未就職である若者を雇った事業主に対して助成する新制度の創設など、約20項目が挙げられています。
その主なものは以下の通りです。
◆重点雇用対策の主な内容
(1)若年雇用対策の総合的推進(内閣府)
…国・地域において「若者雇用推進会議(仮称)」を開催するとともに、若年雇用に関し、「将来雇用見通し・若者雇用推進アクションプラン」の策定等を行うための基礎調査(採用側の企業や学生等へのアンケート調査等)等を実施する。
(2)民間機関のノウハウ活用、専門人材育成等によるキャリア教育プログラムの効果的推進による若者の職業への円滑な移行支援(厚生労働省)
…中学、高校生等を対象に、キャリア・コンサルティング等の専門性を活かし、キャリア教育の企画・運用を担う専門人材の養成や、キャリア教育を推進する民間サポート機関の育成・活用等に、関係行政機関等が連携して取り組む。
(3)未就職卒業者早期就職プロジェクト(厚生労働省)
…若者の応募機会の拡大に向けた企業の取組みを促進するとともに、未就職卒業者が応募可能な求人の開拓、事業主への助成措置等を行う「未就職卒業者早期就職プロジェクト」を新たに実施する。
(4)ジョブ・カード制度の一層の展開(厚生労働省)
…ジョブ・カード制度の一環として、新たに、キャリア形成の過程をモデル化したキャリアマップの作成、各種検定の整備、モデル評価シートの多様化等の産業分野ごとの展開に向けた基盤整備を行い、職業訓練に活用する。
これらの対策は、各省庁が2010年度の概算要求に盛り込み、予算要求の規模は合計で約374億円です。ただ、先の総選挙により政権が交代し、一部予算の見直しも検討されていることから、実施にはまだまだ不透明な部分もありそうです。
2009年09月16日
高年齢者を雇用する事業所の割合が増加
昨年9月に厚生労働省が実施した「高年齢者雇用実態調査」の結果が発表されました。この調査の目的は、高年齢者の雇用状況や、平成18年に改正された「高年齢者雇用安定法」の施行後の実態を把握することです。
まず、60歳以上の労働者を雇用している事業所の割合は59.4%(平成16年の前回調査では50.5%)で、前回調査時に比べて8.9ポイント上昇し、企業規模が大きいほど割合が高くなっています。
事業所の全常用労働者に占める高年齢労働者の割合でも、60歳以上の労働者の割合は10.0%(同7.6%)で前回調査時に比べ2.4ポイント上昇しています。
産業別では、60歳以上の労働者を雇用している事業所の割合は、製造業が81.1%と最も高く、次いで建設業が71.1%、運輸業が69.6%となっています。
定年制がある事業所の割合は73.5%(平成16年の前回調査では74.4%)、逆に定年制がない事業所の割合は26.5%(同25.6%)となっています。
事業所の規模別に定年制がある事業所の割合を見てみると、1,000人以上規模が99.8%と最も高く、5〜29人規模が69.6%と最も低くなっています。また、前回調査時に比べ、定年年齢65歳以上の事業所割合が上昇しています。
一律に定年制を定めている事業所で定年年齢が60〜64歳の事業所では、「継続雇用制度」がある割合は89.1%で、このうち「勤務延長制度」があるのは27.3%、「再雇用制度」があるのは83.5%となっています。
また、「勤務延長制度」がある事業所のうち、「勤務延長制度」のみがある事業所の割合は16.5%、「再雇用制度」がある事業所のうち、「再雇用制度」のみがある事業所割合は72.7%となっています。
平成18年に改正された「高年齢者雇用安定法」による段階的な65歳までの定年年齢の引上げや、継続雇用制度の導入義務付けが浸透し、ベテラン社員の経験・能力を有効活用する企業が増えている実態がうかがえます。
2009年08月13日
介護事業所における労務管理
厚生労働省では介護労働者にとって魅力ある職場作りを支援するために、「介護分野における雇用管理モデル検討会」を設けており、施設系の介護サービスにおける雇用管理に関する報告書を発表しました。
「介護労働者の現状」や「雇用管理の課題」などについての検討すべきことや介護事業での取り組み事例をまとめていますので、関心がある方は是非一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。
http://www.mhlw.go.jp/za/0731/d07/d07-03.pdf
当社には、介護事業所からの問合せも多く寄せられており、介護事業所のクライアントも多いので、なかなか興味深い報告書でした。
2009年07月30日
平成20年度 個別労働紛争解決制度施行状況
個別労働紛争解決制度は、平成13年10月の施行から今年で8年目を迎えるが、人事労務管理の個別化等の雇用形態の変化、昨年度後半以降の経済・雇用情勢の急速な悪化等を反映し、全国の総合労働相談コーナーに寄せられた
総合労働相談の件数は、約108万件、民事上の個別労働紛争に係る相談件数も約24万件となり、依然として増加を続けている。
また、助言・指導申出受付件数は約7,600件、あっせん申請受理件数も約8,500件と昨年度実績を大きく上回り、制度の利用が大幅に拡大した。
- 総合労働相談件数・・・1,075,021件、前年度比7.8%増
- 民事上の個別労働紛争相談件数・・・236,993件、前年度比19.8%増
- 助言・指導申出受付件数・・・7,592件、前年度比14.1%増
- あっせん申請受理件数・・・8,457件、前年度比
【相談件数の推移】
制度発足以降確実に件数が増え続けており、平成20年度は増加件数がさらに拡大した。
【民事上の個別労働紛争相談の内訳】
相談の内訳は、解雇に関するものが最も多く25.0%、労働条件引き下げに関するものが13.1%、いじめ・いやがらせに関するものが12.0%と続いており、解雇・労働条件の引き下げ、退職勧奨に関するものの割合が著しく増加した。
なお、解雇に関する相談の内訳を見ると、整理解雇に関するものの伸びが特に著しくなっている。
【助言、指導申出件数及びあっせん申請受理件数】
【あっせん申請受理件数の推移】
あっせん申請に関するものは、解雇に関するものの割合が特に増加した。処理に要した期間は、1ヵ月以内が54.1%、1ヶ月を超え2ヵ月以内が38.1%となっている。
2009年07月28日
夏本番を前にした熱中症対策
おはようございます。今日も暑い日になりそうですね。
近年この時期になると「熱中症」という言葉が取り上げられることが多くなりました。
熱中症は、高温多湿な環境下で、体内の水分・塩分のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破たんしたりするなどして発症する障害の総称です。
熱中症により死亡した労働者の数は、平成11年以降は毎年20人前後で推移しており、平成20年は17人でした。業種別で見ると、平成18年〜20年の3年間(合計は52人)で、建設業(33人)、製造業(8人)、警備業(2人)の順に死亡者数が多くなっており、当然のことながら炎天下での業務を強いられる業種が多くなっています。また、熱中症により4日以上休業した労働者の数は平成19年には約300名でした。
厚生労働省では、熱中症による労災事故を防止するために、先日、「職場における熱中症予防対策マニュアル」(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/06/dl/h0616-1b.pdf)を発表しました。
それによれば、熱中症防止のポイントは以下の通りです。
(1)職場の暑熱の状況を把握した作業環境管理・作業管理・健康管理
(2)熱への順化期間(熱に慣れ、環境に適応する期間)の計画的な設定
(3)自覚症状の有無によらない水分・塩分の摂取
(4)熱中症発症に影響を与える疾患(糖尿病・高血圧症等)を踏まえた健康管理
また、他に参考になるものとして、東京労働局では熱中症への注意喚起を促すリーフレットhttp://www.roudoukyoku.go.jp/roudou/eisei/pdf/pamphlet.pdfを作成しており、熱中症に関する事例などが掲載されています。
まずは、一人ひとりが日頃から健康管理に留意しておくことが大切です。暴飲暴食、睡眠不足などには特に注意が必要です。また、体調の悪そうな労働者には炎天下での業務を行わせないといった配慮も必要です。
また、外での業務の場合、通気性の良い作業服、着帽などは必須です。そして、上記のマニュアルでも挙げられていますが、こまめな水分補給が必要です。「のどが渇いた」と感じたときにはすでに水分が不足しているケースが多いものです。ミネラル等が十分に含まれたスポーツドリンクや塩水などが効果的です。
2009年07月24日
労働局の是正指導が増加! 派遣労働者の雇用と労災をめぐる問題
ここのところ、派遣労働者の雇用に関して、労働局による是正指導が相次いで行われています。
東京労働局は、今年5月に日産自動車(東京都)に対し、派遣社員の雇用の安定を図るように是正指導を行いました。これは、同社に勤務している派遣社員2人(いずれも20代女性)が、直接雇用を申し立てていたことを受けたものです。
また、広島労働局は、マツダ(広島県)に対して是正指導を行っていましたが、同様に、同社の自動車の委託生産を行っている取引先のプレス工業(川崎市)に対しても是正指導を行いました。これは、昨年末に雇止めされた元派遣社員の男性による「同社は派遣社員の短期雇用と再派遣を行っていた」との申告を受けたものです。
さらに、兵庫労働局は、三菱電機の子会社である三菱電機エンジニアリング姫路事業所(兵庫県)と同県の派遣会社に対し、実態は「派遣」であるにもかかわらず「出向」と装って派遣労働者を働かせていたとして、職業安定法に基づく是正指導を行いました。
厚生労働省の調査によれば、2008年に労災事故で死傷した派遣労働者は5,631人だったそうです。2年連続で5,000人を超え、製造業への派遣が解禁された2004年と比較すると8.4倍になっています。しかも、労災事故を報告しない「労災隠し」が横行しているとの疑いもあり、上記の数は「氷山の一角ではないか」との声もあがっています。
このような状況を受け、厚生労働省では、派遣先事業場で発生した労災事故について、派遣先への求償権の行使を徹底することを目的として、過失割合の判断基準を作成する方針を明らかにしました。過去の損害賠償請求に関する裁判例などを参考にして、今年の10月頃までにガイドラインをまとめる意向のようです。
派遣労働者をめぐっては、偽装請負、偽装派遣、偽装出向などが一時期話題となり、新聞等でも大きく報道され、多くの企業が派遣労働者の雇用改善に取り組みました。
現在は不況の影響もあって多くの企業が経営に行き詰まっています。しかし、そのような状況下であっても、「コンプライアンス遵守」の精神を忘れてはいけません。法律に則った派遣労働者の雇用、労災事故への対応等が企業には求められます。
2009年07月02日
企業の「営業秘密」を保護するための改正不正競争防止法
この度、「不正競争防止法の一部を改正する法律案」が可決・成立し、4月30日に公布されました(施行は来年の4月以降となる予定)。
この法改正は、「企業間の公正な競争の確保」の観点から、企業が保有する営業秘密の保護を図るための措置を設けたものであり、一般企業にも大きな影響を与えるものと思われます。
特に以下の(3)については、自社の従業員や取引先にも関係がありますから、特に注意が必要です。
以下、法改正の内容を簡単にご紹介します。
(1)営業秘密侵害罪の目的要件の変更
これまで、営業秘密を侵害したとして罰するには、「不正競争の目的で」侵害することが必要とされていました。これが改正され、「不正の利益を得る目的で、またはその保有者に損害を加える目的で」侵害することで足りるようになりました。
この改正により、これまでは罰することのできなかった「不正な利益を得るため、海外政府などに営業秘密を開示する行為」や「営業秘密の保有者を単に害するため、営業秘密をネット上の掲示板に書き込む愉快犯的な行為」も罰せられるようになるため、結果的に、営業秘密を保有する企業がこれまでよりも保護されるようになります。
(2)処罰対象行為の見直し
これまで、処罰の対象となるのは、第三者などが違法性の高い行為(詐欺的行為や管理侵害行為など)を行ったうえで、「営業秘密記録媒体などを介した方法により」不正に営業秘密を取得した場合だけでした。
これが改正され、営業秘密の取得方法が記録媒体などを介していない場合でも罰せられるようになりました。
この改正により、「営業秘密を記憶する場合」や「記録媒体などに記録されていない営業秘密(会議における会話)を盗聴する場合」も処罰の対象となります。
(3)従業員等による営業秘密取得自体への刑事罰の導入
これまで、営業秘密の保有者から秘密を示された者(従業員や取引先など)については、秘密の使用・開示に至った段階で初めて刑事罰の対象となっていました。
これが改正され、「記録媒体などの横領」「記録媒体などの記録の複製作成」「記録の消去義務に違反したうえで消去したように偽装する行為」という方法で営業秘密を取得した場合に罰せられるようになりました。
2009年06月30日
労働相談件数が過去最多を更新!
労働者と企業間のトラブルを裁判に持ち込まずに迅速に解決することを目指す「個別労働紛争解決制度」に基づく2008年度の「民事上の個別労働紛争相談件数」が、過去最多の約23万7,000件に上りました。厚生労働省は、「急激な景気悪化を反映し、解雇や雇止めをめぐる非正規労働者からの相談が目立っている」としています。
個別労働紛争解決制度は2001年10月にスタートし、全国の労働局などの「総合労働相談コーナー」で相談を受け付けています。
全体の「総合労働相談件数」は107万5,021件(前年度比7.8%増)と初めて100万件を突破し、このうち、労働基準法や労働者派遣法などに明確に違反しているものを除く、民事上の労働紛争に関するものは23万6,993件(同19.8%増)でした。
紛争内容については、「解雇」関連が25.0%と最も多く、経済的な理由による「整理解雇」の相談件数は前年度の2倍以上になりました。また、「労働条件の引下げ」が13.1%、「いじめ・嫌がらせ」が12.0%でした。
相談を受け、実際に労働局が企業側に指導・助言をしたのは7,592件(同14.1%増)、専門家で構成される紛争調整委員会があっせんに乗り出したケースは8,457件(同18.3%増)となっています。
都道府県労働局長による助言・指導の申出件数が多かったものは、2007年は「解雇」、「労働条件の引下げ」、「いじめ・嫌がらせ」と続き、2008年は「解雇」、「いじめ・嫌がらせ」、「労働条件の引下げ」でした。
一方、紛争調整委員会によるあっせん申請件数が多かったものは、2007・2008年ともに「解雇」、「いじめ・嫌がらせ」、「労働条件の引下げ」と続き、上位3件は顔ぶれが同じとなっています。
もう一歩踏み込んで、個別労働紛争解決制度を利用する手前で、労使トラブルを未然に防ぐためには、「労使間でコミュニケーションをとっていく」、「細やかな就業規則を作成する」といったような努力が必要なのではないでしょうか。
2009年05月27日
派遣元・先指針が改正されています!
労働者派遣契約を途中で解除するいわゆる「派遣切り」といった事例が増えていることに伴い、本年3月31日に「派遣元・先指針」が改正・適用されました。
◆「派遣元・先指針」とは?
「派遣元・先指針」とは、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」にもとづく次の2本の指針のことを言います。
・派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/haken/15.html
・派遣先が講ずべき措置に関する指針
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/haken/16.html
◆改正内容
改正内容は以下のとおりです。
(1)派遣契約の中途解約にあたって、派遣元事業主は、まず休業等により雇用を維持するとともに、休業手当の支払い等の責任を果たすこと
(2)派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により派遣契約を中途解約する場合は、休業等により生じた派遣元事業主の損害を賠償しなければならないこと
(3)派遣契約の締結時に、派遣契約に(2)の事項を定めること
★解説★
休業手当とは、使用者が労務に従事する意思のある労働者に労働させなかった場合、その期間中、当該労働者に支払いを義務づけられている手当のことで、工場の焼失や原料不足・景気の悪化などの場合でも支払の義務は免れません。
一般的には、最低でも平均賃金の60%を休業手当として支払わなければなりません。
派遣労働者を雇用しているのはあくまでも派遣元事業主のため支払い義務を負うのは派遣元となります(上記(1))が、派遣先事情による派遣打ち切りの際には、休業手当分の補償として上記(2)のとおり派遣先事業主に対して派遣元事業主が損害賠償を請求することも考えられます。
休業手当支払いに関しては、政府助成金の請求の検討も有効でしょう。(当社でも助成金を扱っています!↓)
http://blog.livedoor.jp/d_pro11/archives/cat_50016442.html
上記(3)の「派遣契約」とは派遣先企業と派遣元企業が締結するもので、派遣労働者が結ぶものではありません。派遣労働者は派遣元企業と雇用契約を締結し、派遣先企業の指揮命令のもと(雇用関係はない)、労働力を提供します。
**改正指針の要綱については以下厚生労働省HPリンクをご参照願います。
http://www-bm.mhlw.go.jp/houdou/2009/03/h0331-21.html
2009年03月24日
ワークシェアリング拡大なるか?!
Dプロの古川です。
最近よく耳にするワードのひとつに「ワークシェアリング」があります。
ついに、今月23日に行われた政労使の間の会合で「日本型ワークシェアリング」を今後推進していくことで合意が取られました。(産経新聞3月23日)
もちろんその背景にあるのは景気悪化に伴う厳しい雇用情勢です。
ワークシェアリングによって安易な解雇を避け、労働時間を減らし、又、休業日を増加させるなどして人件費を圧縮させるのが主な狙いだと思われます。
ワークシェアリングは従業員の士気を高め、企業が果たすべき社会的責任をまっとうできるといった良い点があります。
製造メーカーを始めワークシェアリングを検討している企業は少なくなく、日産自動車では今月20日を営業や経理などの事務部門を含め一斉休業日とするといった人員削減と同じ効果をもつ制度を実施。年度末にかけて制度化や報酬体系を詰めているようです。
また、三菱電機では有給休暇の一斉取得を職場単位で取れるように制度を改め、ワークシェアリング導入に向けた職場環境整備に着手し、日立製作所では1か月に1回程度の無給休暇を設けるなど、各社さまざまな取り組みが始まっています。(産経ニュース3月13日)
帝国データバンクの企業の意識調査(3月4日付・本年2月実施)によると「ワークシェアリングを推進すべき」との回答に4割弱の企業が賛同しています。
実際に導入予定がないとする企業は半数を超えているものの、前述したようなメリットを重視し、注目している企業が多いのは確かなようです。
今後の動向に注目です。
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2008年12月15日
雇い止め非正規労働者の失業手当が拡充
厚生労働省は、雇い止めされた非正規労働者に対して失業手当を拡充する方針を固めました。(4日)
年明けの通常国会で雇用保険法を改正し、09年度から開始したい考えで、以下のような内容で検討しています。
一方で、厚生労働省の推計では非正規労働者(約1700万人/07年)の6割程は雇用保険に加入していないため失業手当を受けることができないという状況も見過ごせません。
◆失業手当拡充方針の内容
・雇用保険の加入期間について:
失業手当を受けるには雇用保険に1年加入していることが原則
→ 6か月に短縮する方針
・給付日数について:
失業手当を受けることができる期間(給付日数)は、通常は雇用保険の加入期間によって異なっています。また、退職の理由(倒産、解雇など)によっては、その時の年齢も加味され、受給日数が延びることもあります。
しかし、今回問題となる「非正規労働者の雇い止め」の場合には自己都合退職と同じ扱いをされていました。つまり、現行では、長年契約更新され続けて働いていたのが突然雇用契約を更新されず職を失ってしまっても自己都合で会社を辞めた人と同じ扱いです。
そこを改善し、
→ 正規社員の解雇と同じように手厚くする
としています。たとえば、雇用期間1〜3年で雇い止めになった非正規労働者への給付日数を現行の一律90日を、45〜59歳は180日、60〜64歳は150日など、倒産・解雇と同水準に延長するということです。
・再就職が困難な人に対して:
再就職が困難な人とは、特に雇用情勢の悪い地域や、45歳以上の中高年より給付期間が短い若年層を想定しています。
→この方々の失業手当の給付日数を60日程度延長する
としています。
2008年11月28日
監督指導による賃金不払残業の是正結果
厚生労働省において、平成19年4月から平成20年3月までの1年間に、全国の労働基準監督署が割増賃金の支払いについて労働基準法違反(1企業当たり100万円以上の割増賃金が支払われた事案)として是正を指導した結果が取りまとめられた。
【是正企業数】 1,728企業 (集計を開始した平成13年度以降最多)
【是正金額】 272億4,261万円 (集計を開始した平成13年度以降最多)
1企業平均1,577万円
【対象労働者数】 179,543人
賃金不払残業(所定労働時間外に労働時間の一部または全部に対して所定の賃金または割増賃金を支払うことなく労働を行わせることをいう。いわゆる「サービス残業」のこと。)の解消については、平成13年4月に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」を策定し重点的に監督指導を実施している。
労働時間管理をしっかり行い、労働基準監督署の調査が入っても慌てることのないようにする必要があります。