当社によく寄せられる相談のひとつとして、労働時間管理についてがあります。

そこで今回は、変形労働時間制のひとつである、「1箇月単位の変形労働時間制」について解説します。


☆ なぜ必要?

労働基準法では、使用者は労働者に、休憩時間を除き1週40時間、1日8時間を超えて労働させてはならないとしています。(この40時間、8時間を法定労働時間といいます)

そうすると、たとえば、月末は業務量が多く、月初は少ない、というような場合、月末は割増賃金の支払いが発生するのに、月初は手待ち時間がある、というように使用者にとっては効率良く働かせることができません。

そこで、一定の条件のもと、特定の期間を平均して法定労働時間を超えなければ、期間内の特定の日または週において法定労働時間を超えて労働させることができるしくみとして、「変形労働時間制」があるわけです。

☆ 変形労働時間制の種類

次の3種類があります。
1.1箇月単位の変形労働時間制 (労働基準法 第32条の2)
2.1年単位の変形労働時間制  (同法 32条の4)
3.1週間単位の非定型的変形労働時間制 (同法32条の5)

これらのほかに、フレックスタイム制 (同法第32条の3)もあります。


☆ 「1箇月単位の変形労働時間制」の導入手続き

1箇月単位の変形労働時間制とは、1箇月以内の一定の期間(変形期間)を平均して、1週あたりの労働時間が40時間以下(特例措置対象事業は44時間以下)の範囲内であれば、特定の日や週について1日および1週間の法定労働時間を超えて労働させることができる制度のことをいいます。

1箇月単位の変形労働時間制を導入するためには、就業規則その他これに準ずるものに定めるか、または労使協定を締結することが必要です。

(1)就業規則等に定める場合

・常時10人以上の労働者を使用している事業場の場合・・・

就業規則の作成義務がありますので、この制度を導入する場合は、就業規則にその旨を記載することが条件となります。

そのほか、次の事項も必要となります。
−変形期間中の労働日と各日の労働時間明示、労働者に周知する。
−変形期間の起算日を明示、労働者に周知する。
−就業規則(変更)届を所轄労働基準監督署に提出する

この手続きを行えば、労使協定の締結、届出は不要となります。

・常時10人未満の労働者を使用している事業場の場合・・・

就業規則の作成義務がないので、それを作成していない場合は就業規則に準ずるものに定めることになります。
この場合でも、就業規則と同様に、労働者に周知することが必要です。


(2)労使協定を締結する場合

労使協定には次の事項が必要となります。
−労使協定に変形期間とその起算日を記載する。
−変形期間中の各日および各週の労働時間を記載する。
−協定の有効期間(期限)を記載する。
−作成した労使協定を労働者に周知し、所轄労働基準監督署に提出する。

常時10人以上の事業場の場合は、労使協定を締結するだけでは足りず、就業規則にも定めが必要となりますので、ご注意ください。


社会保険労務士法人 D・プロデュース