今年度もあと1ヶ月と少しを残すところです。多くの企業では来年度の事業展開に向けて本格的に動き出しているところでしょうか。

 人材の採用・確保は事業経営の大きな柱となります。将来の企業の方向性を左右するだけでなく、人件費を含め大きなウエイトを占めることになり、既に採用内定を出している企業は、人件費や職場配置、教育スケジュールなどの計画を立てて体制を整えています。

 しかし、予定が変わったりした場合などで採用内定を取り消したい場合、簡単には取り消すことはできません。

 通常、採用内定の取消しは「労働契約の解約」となり原則「解雇」となります。採用内定の取扱いについては、注意すべきポイントはたくさんありますが、今回は、「内定者がうつ病にかかって内定取消をしたいケース」を考えてみます。

 “塾磴ら考える。

  最高裁は「採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実があって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である」と判示しています。(最2小昭和54年)

 つまり、うつ病などの精神疾患にかかっている、疑いがある場合はこれにあたるので、採用内定を取り消すことは可能とも考えられます。

 注意点

  ここで会社が注意しておくべきことは、内定者が取消無効の訴訟などを起こした場合、その疾患が入社予定日までに治癒しないこと、入社後の業務に支障がでることなどについて、使用者として立証することが必要になってくるということです。

 通常、入社後の労働者については、就業規則に根拠条項があれば、会社指定の医師の診断を受診させることが出来ますが、採用内定者(就業規則適用外)については、本人の同意が無い限りそれを義務付けることはできません。

 そうすると内定者の主治医が「完治する見込みがある」などの診断書が提出されると、使用者として医学的に確認することが難しくなります。

 したがって、そうのような事態を予防するためにも、採用内定段階で提出を求める誓約書において、入社日までの間であっても、「会社が指定する健康診断を受診する」ことについて誓約させておくことが重要になってきます。

 このように、何気ない書類の作り方次第で、会社のリスクを減らすことができます。就業規則を作成するときなどに「出来合いのモデルを使用することはリスクが一杯なので気をつけましょう」とお伝えしているのも、このような理由が一つにあるのです。

 

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