2015年09月
2015年09月25日
トラック運送業の 「長時間労働改善」に官民が本腰
◆本腰を入れ始めた官民
本年5月、厚生労働省に「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」が設置されました。
この協議会の規約によると、「トラック運送事業者、荷主、行政等の関係者が一体となり、トラック運送業における取引環境の改善及び長時間労働の抑制を実現するための具体的な環境整備等を図る」ことが目的だそうです。
◆労基法の改正を見据えて
現在国会で審議されている「労働基準法等の一部を改正する法律案」では、中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金を見直すことが盛り込まれています。
現在、月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)が中小企業については適用が猶予されていますが、この猶予措置を廃止する内容です。廃止時期(予定)は平成31年4月1日ですが、トラック運送業者にとっては特に影響が大きいと言えます。
法改正への対応のため、国・行政は今後平成30年度にかけて、企業の実態調査や労働時間縮減のための助成事業、長時間労働改善ガイドラインの策定と助成事業などを行うことを協議会で検討していくようです。
◆労働時間の状況
労働時間の最近の状況をみると、パート労働者の比率の上昇により、年間総実労働時間は減少傾向で推移しています。また、週の労働時間でみると、60時間以上の人の割合は全体では近年低下傾向で推移し、1割弱となっていますが、30代男性では17.0%と、以前より低下したものの高水準で推移している状況です。
これをトラック運送業界についてみると、特に中小企業では、時間外労働が60時間超となる労働者の割合が非常に多い状況にあります。また、長時間労働に伴う労災(脳・心臓疾患、精神障害)の件数も多くなっています。ドライバーが運転中に意識を失ったりすれば、他者を巻き込んだ死亡事故等に直結し、会社の存続に関わる事態となります。
◆今から始める賃金見直し
トラック運送業界には、改善基準告示や行政による監督指導への対応などもありますが、労働時間の変化に伴う賃金体系の見直しにはそれなりの時間がかかります。
関連助成金等を活用しながら、「所定外労働時間の削減」や「年次有給休暇の取得促進」等の必要な措置を講じていく必要があります。
2015年09月17日
個別労使紛争の主な解決手段と 「解決状況確認ツール」の活用
◆個別労使紛争の解決手段
解雇や労働条件の引下げといった問題をめぐり、企業と個々の労働者との間で生じる紛争の主な解決手段として、「労働局によるあっせん」「労働審判」「民事訴訟」が挙げられます。
各制度の特徴は、以下の通りです。
・「労働局によるあっせん」:弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家により組織された紛争調整委員会が、当事者双方の主張の要点を確かめます。双方から求められた場合には、両者に対して、事案に応じた具体的なあっせん案を提示します。(都道府県労働局によるあっせんの場合。この他、都道府県労働委員会・労政主管部局等でも個別労働関係紛争のあっせんを実施しています)
・「労働審判」:労働審判官(裁判官)1名と労働関係の専門的な知識と経験を有する労働審判員2名で組織された労働審判委員会が、原則として3回以内の期日で審理し、適宜調停を試みます。調停による解決に至らない場合には、事案の実情に即した柔軟な解決を図るための労働審判を行います。
・「民事訴訟」:裁判官が、法廷で、双方の言い分を聴いたり、証拠を調べたりして、最終的に判決によって紛争の解決を図る手続きです。訴訟の途中で話合いにより解決(和解)することもできます。
◆最近の傾向
先日、厚生労働省が「予見可能性の高い紛争解決システムの構築」に関する調査結果を公表し、上記の3つの解決手段を利用した場合、「会社が従業員に金銭を支払って解決した事案」が9割を超えたことがわかりました。
内閣府の規制改革会議でも、裁判で不当解雇と認められた場合に労働者が申し出れば金銭補償で解決できる制度について、年内にも導入の検討を始めると発表しています。
◆「解決状況確認ツール」とは?
そんな折、厚生労働省は、個別データに基づいて条件を設定すると労働紛争の解決状況を確認することができるサイトを開設しました。
具体的には、(1)事案の内容(普通解雇、整理解雇、労働条件引下げ等)、(2)残業代請求の有無、(3)労働者の性別、(4)雇用形態、(5)勤続年数、(6)役職、(7)月額賃金、(8)企業規模の条件を設定すると、その条件に合った事件の解決方法(あっせん、労働審判、和解)や利用期間、金銭解決の場合であれば解決金を調べることができます。
2015年09月14日
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2015年09月10日
深夜残業翌日は遅出の 「勤務間インターバル制度」導入の動き
◆「勤務間インターバル制度」とは?
この制度は、終業から次の始業までの間に一定の休息を取らせる仕組みで、大企業での導入が増えています。極端な働き過ぎを防ぐことが目的ですが、今後、多くの企業に広がるか注目されています。
◆KDDIの事例
KDDIはこの7月から、「8時間以上の休息確保」ルールを本格的に始めました。
管理職を除く社員約1万人が対象で、午前1時以降の勤務を原則禁止し、始業時刻の午前9時までに8時間以上の休息が取れるようにするというものです。
1時以降も働いた場合には、次の出勤をその分ずらすことになります。例えば午前2時退社なら、翌朝の出勤は10時以降となります。また、8時間ギリギリの日が続かないよう、休息が11時間を下回った日が1カ月に11日以上あった場合は本人や上司に注意を促します。
以前からあった制度ですが、組合の求めに応じて対象を広げたものです。
◆EUではすでに義務化
欧州連合(EU)では、すでに11時間以上の勤務間インターバルの確保を企業に義務付けていますが、日本ではこうした法規制はありませんので、労組が経営側と話し合って自主ルールとして確保に乗り出しています。
◆今後の広がりは?
24時間営業のレストランを展開するある企業では昨春、店長ら従業員に「11時間以上の休息」を取らせる仕組みをつくりましたが、「店長に急な残業が入っても、翌朝の仕事をパートに頼める雰囲気ができた」などと喜ばれているようです。
3週間分の勤務計画を本社がチェックし、人手不足で休息が取れない店には、近くの店から従業員を派遣させているそうです。
◆仕事の分担や効率化を進める取組みも必要
ただ、この制度で働き過ぎが必ず防げるわけではありません。8時間の休息では、通勤や食事時間を除くと睡眠は5時間ほどになり、連日続いたら働き手の健康を害するレベルです。
また、休息が取れたとしても仕事量が減らなければ、かえって働き手を精神的に追いつめる恐れもあります。
中小企業や労組のない企業への浸透も課題です。厚生労働省の審議会では昨冬、労組側から「勤務間インターバルを導入すべきだ」との意見が出ましたが、経営側が「企業に一律に導入するのは不可能」と反対し、法案化には至りませんでした。